はじめに
矯正治療は、美しい歯並びを手に入れるだけでなく、歯の健康を維持するための重要な手段です。しかし、矯正治療中は、歯みがきが難しくなるため、虫歯のリスクが高まることがよく知られています。矯正装置が口内に装着されることで、歯の表面や歯と歯の間に歯垢が溜まりやすくなり、その結果、虫歯になりやすくなります。
本記事では、矯正治療中に虫歯にならないための具体的な予防策や、矯正治療中の歯磨き方法、使える虫歯予防グッズについて詳しく解説します。矯正治療を検討している方や、現在治療中で虫歯のリスクを心配している方にとってお役に立てる内容となっていますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
矯正治療中の虫歯リスク

矯正装置は歯の表面に直接取り付けられ、歯並びを整えるために使用されますが、その構造が歯の清掃を困難にし、結果として虫歯リスクが増すことがあります。また、装置の種類によるリスクの違いもあります。以下で具体的な内容を解説します。
表側のブラケットワイヤー矯正
表側のブラケットワイヤー矯正は、最も一般的な矯正方法で、歯の表面にブラケットという装置を取り付け、ワイヤーで連結します。これにより、歯を動かすための圧力がかかります。この方法の特徴は、ブラケットやワイヤーが歯の表面に付着しているため、歯ブラシの毛先が届きにくくなります。特に歯の表面は汚れが付きやすく、ブラケットとワイヤーの周囲に歯垢が溜まりやすくなります。その結果、虫歯が多発する可能性が高まるのです。
注意点:
- 矯正治療中は、歯並びが変化するため、定期的に歯科衛生士から歯みがきのアドバイスを受けることが重要です。一般的な歯ブラシでは届きにくい部分があるため、ワンタフトブラシなどの補助具を使用すると良いでしょう。
- ワイヤーに麺類や繊維質の食材が絡まりやすく、アメやガム、餅などがくっつくと、装置が壊れることがあります。食事に注意し、なるべくこれらの食材は避けるようにしましょう。
裏側のブラケットワイヤー矯正
裏側のブラケットワイヤー矯正は、装置が歯の裏側に取り付けられるため、他人からは見えにくいという利点があります。しかし、装置が歯の裏側にあるため、磨きにくさは表側矯正と同様です。裏側には唾液が自然に分泌されるため、ある程度の自浄作用がありますが、それでも歯垢が溜まりやすく、虫歯のリスクは完全には回避できません。
注意点:
- 歯の裏側は元々磨きにくいため、装置が付いているとさらに歯垢が付きやすくなります。定期的に歯科衛生士に磨き方のチェックを受けることが重要です。また、ワンタフトブラシや歯間ブラシなどの併用も良いでしょう。
- 裏側矯正も食事に注意が必要です。絡みやすい食材やくっつきやすいものは控えましょう。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを使用して歯を動かす方法です。装置が薄くて透明なため、矯正治療中であることが目立ちません。また、取り外しができるため、食事や歯磨きの際には装置を外せる便利さがあります。しかし、装置とお口の中が清潔でないと、虫歯のリスクが高まるため、十分な清掃が必要です。
注意点:
- マウスピースは柔軟性があり、表面に細かい傷ができやすいです。これにより、細菌が繁殖しやすくなります。毎日洗浄し、常に清潔を保つことが重要です。
- マウスピースを装着していると、歯全体が覆われた状態になるため、お口の中が不衛生になると虫歯のリスクが増します。食後には必ず歯みがきを行い、装置を清潔に保つことが必要です。
矯正治療中に虫歯が見つかった場合、治療を行うタイミングや方法についても考慮する必要があります。矯正治療を開始する前に虫歯が治療されていないと、治療の進行や結果に悪影響を及ぼす可能性があるため、事前に虫歯治療を完了しておくと良いでしょう。
矯正治療中に虫歯にならないための予防策
矯正治療中は、歯並びを整える過程で口腔内の環境が変化し、虫歯のリスクが高まります。ここでは、矯正治療中に虫歯を予防するための具体的な対策を紹介します。
適切なブラッシング方法
矯正治療中は、ブラケットやワイヤーが歯の表面に取り付けられるため、従来の歯磨き方法では十分に歯を清掃することが難しくなります。歯とブラケットの間、そして歯と歯の間に汚れがたまりやすくなります。そのため、歯ブラシの毛先を歯の面に対して45度に傾け、小刻みに動かす磨き方が効果的です。また、歯ブラシの種類にも注意が必要で、柔らかい毛のものを選ぶと良いでしょう。ブラケットの周りやワイヤーの下も丁寧に磨くことで、虫歯のリスクを減らせます。
フッ素の使用
フッ素は歯質を強化し、酸による脱灰を防ぐ効果があります。特に矯正治療中はフッ素を含む歯磨き剤を使用することが推奨されます。高濃度のフッ素配合の歯磨き剤を選ぶことで、歯の再石灰化を促進し、初期虫歯の進行を抑えることができます。歯科医院では、フッ素塗布を受けることで、さらに強力な予防効果が期待できます。自宅でも、フッ素入りの洗口液を利用するのが良いでしょう。
定期的な歯科検診とクリーニング
矯正治療中は、歯科医院での定期的な検診が欠かせません。通常の歯磨きでは取り切れない部分の汚れや歯垢をプロの手で除去することが重要です。また、歯科医師や歯科衛生士からのブラッシング指導も受けることで、効果的な磨き方を習得することができます。定期的なクリーニングは、虫歯や歯周病の早期発見にも役立ち、治療が進むにつれて変化する口腔内の状態に適切に対処できます。
食事の管理
矯正治療中は、食事の管理も重要な予防策のひとつです。硬い食べ物や粘着性のある食べ物は、矯正装置に引っかかりやすく、歯に負担をかける原因となります。また、糖分を多く含む食べ物や飲み物は、虫歯の原因となる酸の生成を促進するため、控えることが望ましいです。食後にすぐに口をすすぐ習慣をつけることで、口腔内の酸性度を低下させることができ、虫歯予防につながります。
シーラントの利用
シーラントは、奥歯の溝や前歯の裏側の深い溝に塗布することで、虫歯の予防効果を高める材料です。これにより、歯ブラシが届きにくい部分を保護し、虫歯の進行を防ぎます。特に矯正治療中は、装置の影響でブラシが届きにくい部分が多く、シーラントの利用が有効です。歯科医院での定期的なチェックアップと併用することで、より効果的に虫歯を予防することができます。
矯正治療中の歯磨き方法

矯正治療中の歯磨きは、通常の歯磨きとは異なる特別なアプローチが必要です。矯正装置が歯に装着されているため、ブラケットやワイヤーの周囲に食べ物やプラークが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。ここでは、矯正治療中に効果的な歯磨き方法とそのコツを紹介します。
1. 特殊な歯ブラシや補助アイテムの使用
矯正治療中には、通常の歯ブラシだけでは不十分です。ヘッドが小さい歯ブラシや歯間ブラシ、ワンタフトブラシを使用することで、装置の周りやワイヤーの下を効果的に磨くことができます。特に、矯正用に設計された歯ブラシは、ブラケットやワイヤーの形状に合わせて毛束が配置されており、効率よく磨くことが可能です。毛束が山型や谷型の歯ブラシを使うことで、矯正装置の複雑な形状にフィットし、磨き残しを減らすことができます。
ワンタフトブラシや歯間ブラシは、特に矯正装置の周りや歯と歯の間、歯肉の境目を細かく磨くのに役立ちます。ワンタフトブラシは毛束が少なく、ヘッドも小さいため、歯と歯の間やブラケット周囲の細かい部分を磨くのに適しています。歯間ブラシは、歯と歯の間の汚れを効果的に取り除くため、装置の周りに残った食べかすやプラークを除去するのに便利です。
2. 歯ブラシの持ち方と動かし方
歯ブラシを持つ際は、親指、人差し指、中指でしっかりと持ち、鏡を見ながら歯ブラシを当てるようにしましょう。ブラシは歯に対して45度の角度で当て、力を入れすぎずに小刻みに動かしながら磨きます。この方法により、ブラケット周囲や歯と歯の間の細かい部分にも毛先が届きやすくなります。
3. 毎食後の歯磨き
食事後は必ず歯を磨くように心がけましょう。矯正装置を付けている間は、食べ物の残りやすさが増すため、虫歯のリスクが高まります。食事の後に歯を磨くことで、食べ物の残りやプラークを迅速に取り除き、口腔内の健康を維持することができます。特に、食事後30分以内に歯を磨くことが理想です。
4. 歯科での指導
矯正治療を始める前後に、歯科医院で歯磨きの指導を受けることが非常に有益です。多くの歯科医院では、プラークを赤く染める液を用いて磨き残しを確認しながら、効果的な歯磨きの方法を指導しています。この練習を通じて、自分の歯磨きの癖を把握し、改善することができます。
矯正治療中は、虫歯や歯周病のリスクが高まるため、普段以上に注意深いケアが必要です。これらの方法を実践することで、矯正治療中でも健康な歯を維持しやすくなります。
矯正治療中に使える虫歯予防グッズ
矯正治療中に虫歯を予防するためには、特別なケアが必要です。以下のグッズは、矯正治療中の口腔ケアに役立ちます。
歯ブラシ
ワンタフトブラシ
歯磨き粉
デンタルフロス
洗口液
まとめ
矯正治療中は、矯正器具の影響で歯の表面が複雑になり、虫歯のリスクが高まるため、適切な予防対策が欠かせません。しかし、適切なケアと予防策を講じることで、虫歯のリスクを大幅に減少させることが可能です。歯磨きを徹底し、歯科医の指導に従いながら、専用の予防グッズを活用することで、矯正治療中でも健康な歯を維持することができます。
特にフッ素入りの歯磨き粉や、口腔ケアに適したブラシ、マウスウォッシュを取り入れることで、虫歯の発生を防ぐことができます。矯正治療中の健康な歯を守るためには、日々の細かなケアが大切です。定期的な歯科検診も忘れずに行い、歯の状態を常にチェックするようにしましょう。矯正治療を考えている方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。
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